2/6読書端末元年は終わったが・・・

 2004年、松下電器(https://www.sigmabook.jp/)、ソニー(http://www.sony.jp/products/Consumer/LIBRIE/)という世界に冠たる大企業から、読書端末が発売された。そのニュース価値はソニーの薄型テレビや松下のDVDレコーダーの新製品発表の何倍も大きく、ロイターやUPIなどの通信社が世界に伝えた。

 米国で失敗した読書端末を、今更なぜ日本の企業が開発したのか?と米国の企業から訊かれ、以下の3点を挙げた。

1.電子辞書の成功

 10数年前のワープロ専用機と同様、日本の電機メーカーの確かな物作り技術を活かして、カシオ、シャープ、キヤノンSIIソニーの五社が製造・販売する電子辞書は、その市場も、搭載するコンテンツも飽和状態となっている。新たな顧客を開拓するために電子書籍に目を向けている。

2.日本企業のお家芸

 先日、富士通が発表した電子ペーパーや、凸版+イーインクブリヂストン、大日本インキ、DNPの曲がる有機ELなど、多くの日本企業が電子ペーパーを試作している。また、デジカメ、携帯電話、スキャナー、プリンターなどの開発・製造は日本の独壇場で、読書端末も日本の卓越した精密な製造技術を活かすことができる。

3.中国の電子教科書

 一人当たりの年間の紙消費量が、29キログラムと欧米や日本の1/10しかない中国では、製紙会社を誘致するよりも、電子ペーパーを模索している。これは、電話線を広い国土に張り巡らすよりも、それをパスして携帯電話を導入した政策とも符合し、政府が主導できる電子教科書が検討されているという。中国の携帯電話は劇的な導入となったが、電子教科書は試行錯誤が繰り返され、5年、10年というサイクルで、徐々に導入されると思う。

 何れにしても、昨年は「読書端末元年」となったが、販売は伸び悩んでおり、出荷台数は両社とも、まだ4桁である。原因は、電子書籍のコンテンツ不足と、解像度・コントラスト・重さ・使い勝手など、読書端末としての完成度にある。

 松下電器は、7月の東京国際ブックフェアシグマブックの次機種(http://bizpal.jp/eijyo/20050712)を参考展示した。読書端末というよりも、メモリーカードの表示装置のようで、文字だけでなく、写真や動画、音楽の再生を行う。

 現行のシグマブックには、EBIjビュアーとT-Timeが搭載されているが、コミックを中心とした画像型電子書籍のイーブック イニシアティブ ジャパン(EBI)社(http://www.ebookjapan.jp/)と、テキスト型電子書籍ビュアーT-Timeのボイジャー社(http://www.voyager.co.jp/T-Time/)の2社が、強い個性と意志で業界を牽引している。