天角地眼一黒鹿頭耳小歯違

 鈴本の早朝寄席、今日は最高の入りで、100人は超えていたと思う。理由は簡単で、4人中三遊亭金太、五街道喜助、橘家亀蔵の3人が、三日後には真打ちに昇進するので、最後の早朝寄席。昨晩の新宿末広亭深夜寄席にも出たとのことで、三人とも登場したときには飲み過ぎで眠そうだった。各々「宮戸川」、「子別れ」、「お菊の皿」だったが、枕から、噺にはいるとドンドン、スピードが上がってきた。三人とも今が旬なので上手い。亀蔵さんなど、2年前に黒門亭で最初に聴いた人なので、何となく感慨深い。

  

 時々、黒門亭で一緒になる叔父さんに、鈴本のエレベータでバッタリ。棟梁のような雰囲気の方で、古くからの落語ファンのようだ。根多の名前はあまりご存じないらしく、黒門亭で「鈴本の三三(さんざ)さんの噺は何?」、「ねずみ、仙台ねずみですよ」などと会話している。「今日は黒門亭も?」と訊いたら「栄枝さんが出るから」とのこと。栄枝という落語家を知らなかったので、私も黒門亭までお付き合いすることにした。

  

 黒門亭は、二ツ目柳家右太桜、柳家小きん、林家時蔵、春風亭栄枝の4人で、栄枝さんは大田蜀山人狂歌をたくさん紹介する「蜀山人」。高齢だが凛とした落語家である。右太桜は「新聞記事」、小きんが相撲取りの「阿武松(おうのまつ)」。代演の時蔵さん【写真】の「牛ほめ」が面白かった。前座噺だが、しっかり聴かせてくれた。

 「天角地眼一黒鹿頭耳小歯違」は牛を褒めることば。角は天に向かい、眼は地をにらみ、首が鹿のように滑らかで、耳が小さくて、歯が互い違いになっている牛・・・ 後半は一石六斗二升八合の語呂合わせ。